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2007.07.28

高校野球・神奈川大会で起きた“振り逃げ3ラン”の全容

第89回全国高校野球選手権大会の神奈川大会準決勝、東海大相模と横浜の対戦で、“振り逃げ3ラン”が決勝点となり東海大相模が6-4で横浜を破ったという珍事件が起きました。“振り逃げ3ラン”という聴き慣れないキーワードが野球ファンとしてすごく気になったため、野球の複雑なルールの再復習も兼ねて、その全容をじっくり追いたいと思います。

○関連記事・Sankei WEB「振り逃げで一挙3失点…横浜高、準決勝で涙 高校野球神奈川大会」
http://www.sankei.co.jp/sports/baseball/070728/bbl070728006.htm
○関連記事・Yahoo!ニュース「東海大相模・菅野が珍プレー“振り逃げ3ラン”」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070729-00000021-sanspo-spo
○関連記事・SANSPO.COM「【高校】東海大相模・菅野が珍プレー“振り逃げ3ラン”」
http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200707/bt2007072900.html

○「Sankei WEB」の記事を抜粋

甲子園で春夏合わせ5回の優勝経験を誇る横浜高が28日、高校野球神奈川大会の準決勝で姿を消した。勝負の分岐点となったのは、振り逃げをめぐっての守備陣のミス。ナインにとっては悔やんでも悔やみきれない1球となった。

問題のシーンは、対戦相手の東海大相模に四回に3点を先制され、なお二死一、三塁の場面。東海大相模の打者菅野が2ストライク後にワンバウンドの球を空振りした。三振だと思った横浜の選手たちはそのままベンチへと引き上げたが、捕手の小田が打者にタッチせず、一塁にも送球しなかったため「振り逃げ」と判断され、打者の菅野までが生還し、一挙3点を挙げた。

横浜高の渡辺元智監督はすぐさま、審判団に抗議したものの、受け入れられずプレーは続行。この3点が響き、2点差で敗れた。「捕手本人がタッチしたと言っているのだから、それを信じるしかない。十中八九、これで流れが向こうにいった。もっと細かいところまで教えればよかった」と渡辺監督は無念さを隠せなかった。

○関連記事・YouTube「振り逃げ3ラン」
http://jp.youtube.com/watch?v=SiS2-t5s4ig

○関連記事・ニコニコ動画(RC)「2007年高校野球神奈川大会準決勝 横浜vs東海大相模(振り逃げ3ラン)」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm716475

それでは、解説付きで順に追っていきます。

■神奈川大会準決勝 東海大相模 VS 横浜(7/28)
○問題のシーン
4回表、東海大相模の攻撃。
この回に3点を先制し、3-0。
2アウト、ランナー一、三塁で、次の打者は投手の菅野(すがの)。
問題となったのは、2ストライク・2ボール後の場面。
この時の応援曲はピンクレディーの「サウスポー」。
ちなみに、菅野はサウスポーではなく右投げ。
ついでに、菅野は巨人・原辰徳監督の甥(監督の妹の子)。
もう一つついでに、原辰徳監督は東海大相模のOB。

○運命の投球
エースの落司投手が外角低めスライダーのボール球を投げ、
一年生の小田捕手がワンバウンドで捕球。
打者はハーフスイング。一塁ランナーは進塁中。
球審は一塁塁審にジャッジを求め、「スイング」の判定をコール。
球審は改めて右手で「ストライク」のジェスチャーをする。「アウト」ではない。
記録上、打者は「三振」、守備側は「暴投」、になるはず。

→この時点で「3ストライク」。しかし「アウト」ではない。

○振り逃げ3ランの始まり
横浜ナインはチェンジだと思ってベンチへ走る。
捕手はどこかへ送球しようとするも、同じくチェンジだと思って送球せずにベンチへ。
一方、打者は本塁を囲む土の部分「ダートサークル」を出る前に、
ベンチの門馬監督からの指示「走れ」に気付き、恐る恐る一塁へ。
さらに指示を受けて恐る恐る進塁し、一、三塁にいたランナーに続いてホームイン。
これが“振り逃げ3ラン”の始まり。ただし、この時点では得点は認められていない。
ちなみに、この間横浜は何もアクションを起こしていない。

→通常、捕手が打者にタッチするか一塁へ投げるかで、「アウト」を確定すべきだったか。

○実況の人の分かりやすい解説
『待ってくださいよ?(打者が恐る恐る進塁中)
 三振ですが、これは、2アウト一塁三塁ですから振り逃げが成立するケースですね?
 ひょっとするとこれは全部点になるかもしれません!(同時に打者がホームイン)
 得点になる可能性があります!
 わあ、ちょっとこれは、審判協議です。
 2アウト一塁三塁ですから、「スイングした」という判定ですから、

 振り逃げできます!

 これは、ランナーにタッチするか一塁に投げないとアウトにならないんですよね?』

○「振り逃げ」の解説

○関連記事・Wikipedia「振り逃げ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8C%AF%E3%82%8A%E9%80%83%E3%81%92

「振り逃げ(ふりにげ)は、野球において三振した打者がアウトとならずに進塁を試みるプレイを指す俗称である。」
→概要、呼称の由来、存在理由、適用条件等は、関連記事の通り。

今回のケースは、以下の全てが該当するため、ルール上「振り逃げ」は明らかに成立。
ちなみに、バットを振らなかった(見逃し三振)としても「3ストライク」になれば成立。
もっとも、今回の場面で打者がバットを振らなかったら、ただの「ボール」で終わっていた。

・第3ストライクの投球を捕手が正規に捕球しなかった場合、
 打者は直ちにアウトにはならず、打者走者となって一塁への進塁を試みることができる。
 →ワンバウンドした球を捕球したため、「正規の捕球」とは言えない。
・無死または一死の時に一塁に走者がいる場合は振り逃げは成立しない。
 二死の時は併殺は起こりえないので、一塁に走者がいても振り逃げを試みることができる。
 →今回は「二死(2アウト)の時」にあたる。
・打者が三振でアウトになったと思い込んで、
 ダートサークルを超えた場合、打者は直ちにアウトとなる。
 →打者は超えないうちに指示に気付き進塁した。

「ダートサークル」の件については、以下の関連記事を参照。
○関連記事・MSN毎日インタラクティブ「第79回センバツ高校野球:開閉会式の司会など決定」
http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/ama/high/archive/news/2007/03/08/20070308ddn035050021000c.html

○「MSN毎日インタラクティブ」の記事を一部抜粋

◇振り逃げルール、本塁周囲に「円」--出た時点でアウト

公認野球規則の改正により、今回のセンバツから本塁を囲む土の部分に「ダートサークル」という円が描かれることが7日の運営委員会で確認された。

改正された規則の6・09(b)では、振り逃げに関するルールを「第3ストライクと宣告されただけでまだアウトになっていない打者が、気がつかずに一塁に向かおうとしなかった場合、その打者は“ホームプレートを囲む土の部分”を出たらただちにアウトが宣告される」と定めている。

円は走路を除く本塁周辺のファウルグラウンドに直径26フィート(約8メートル)で描かれ、捕手が第3ストライクを落球しても、打者が円を出た段階でアウトとなる。この規則は地方大会や夏の甲子園を含むアマチュア野球各大会で採用される。

当然、今大会でも採用されています。

→非常に力強く説得力のある実況内容でした。

○両ベンチの監督 VS 球審
横浜のベンチ前、渡辺監督他選手たちが、球審から状況説明を受ける。
渡辺監督、捕手の肩を力強く叩くアクションを見せる。
→「捕手が打者にタッチした」ということをアピールしていた?
次に東海大相模のベンチ前、門馬監督他選手たちが、球審から状況説明を受ける。
門馬監督、「振り逃げは成立」といった強いアクションを見せる。
→元極楽とんぼの山本圭一氏に似ているとの声あり?
そして、審判団が再び集まった後、球審が再び横浜のベンチ前へ。
渡辺監督は猛抗議。しかし直後、横浜ナインが再び守備位置に就く。

→横浜側は、ミスを完全に認めたのでしょう。

○球審の判定説明
『只今、打者のハーフスイングで、
 球審から一塁の塁審にリクエストをしました。
 それでリクエストをして「スイング」。
 その時点で、「3ストライク」ですがまだ「三振」ではありません。
 で、球審の斉藤は、ここで「今のはスイングだよ」ということを指示しました。
 ですからまだ「アウト」にはなっていないわけです。
 で、タッグも無いというわけで、得点は認めます。以上。』

→「タッグ(tag)」はルールブック上の用語で、いわゆる「タッチ」のこと。

○実況の人の判定説明
『先ほど私が説明した通り、
 三つ目のストライクを空振りという判定。
 菅野は走る権利があります。その権利を行使しました。
 守る方が、この菅野をアウトにしませんでした。
 アウトにしないまま、インプレーのまま、
 守る方は固まったような状態で何もしませんでした。
 その間に、東海大相模の走者は全てホームに帰って3点。
 従って6-0になります。これでよろしいですね?』

→全くもって、その通りです。これで“振り逃げ3ラン”が成立!

試合の結果は、横浜が4回裏に3点、7回裏に1点を返すも及ばず、“振り逃げ3ラン”の3点が決勝点となり、東海大相模が6-4で勝利しました。横浜があの3点さえ防いでいれば、3-4で勝利していたかどうかは、分かりません。でも事実上、ミスをしてあの3点を取られた時点で、「横浜は負けだった」とも言えると思います。

さて、まずは「横浜の誰が悪かったのか?」という嫌な話から。ワンバウンドのボール球を投げた投手か。その球を捕球しながらタッチ等でのアウト確定を怠った捕手か。アウト確定を確認しないままベンチへ帰った他の選手たちか。目前で起こっていた振り逃げに対し早急に指示を出さなかった監督か。この事態は広く見るべきで、「誰が悪い」と言うよりはやはり「横浜側が悪い」と言うべきでしょう。それは、実況の人の最後の説明「守る方が、この菅野をアウトにしませんでした/守る方は固まったような状態で何もしませんでした」が全てではないでしょうか。私はそう思わざるを得ません。

次に、審判の判定の話。これについては、私は特に言うことはありません。球審が一塁塁審にジャッジを求めはしたけど、ミスジャッジは無くルールに則ったことをしたまでです。ただ、球審の判定説明にあった『「3ストライク」ですがまだ「三振」ではありません』は、少し引っ掛かったかな。『まだ「アウト」ではありません』なら納得できたけど。「3ストライク」と同時に「三振」が記録されるわけではないの? 球審が「三振」を確定するまでは記録されないの? ここで言う「三振」が単に「アウト」を指していたの? 細かな点が分かっていません。

続いて、東海大相模の攻撃の話。打者は三振後、高校球児らしく走ってベンチへ帰りませんでした。しかし、そのせいでダートサークルから出ず、また門馬監督の指示にすぐ気付き、ダイアモンドを一周できました。皮肉を言えば、「走って帰らなかったことが功を奏した」。巷では、今回の件で打者の菅野投手が「振り逃げ王子」等と呼ばれ始めているそうですが? それはさておき、「ダメ元」という言葉は使いたくないけど、その精神で「振り逃げ」の可能性を信じて即座に指示を送った門馬監督は、評価されるべきだと思いました。

最後に、何といっても実況の人の話。一度はスリーアウトチェンジと思いながら、すぐにグラウンドで起こっていることに目を向けて、振り逃げの可能性をいち早く示唆したのはすごかったです。「振り逃げできます!」と力強く断言していましたからね。解説者よりも判断と発言が早かったですからね。それでいて、視聴者にも分かりやすい状況説明をしていましたからね。実況の人もまた、評価されるべきだと思いました。

というわけで、これが“振り逃げ3ラン”の全容と私なりの一連の感想でした。こんな珍事件が起こったからこそ、地域上追うのが難しい神奈川大会の準決勝に注目できたわけで。東海大相模と横浜の地元名門校同士の試合を、各動画サイトを通じて観戦できたわけで。妙な表現ではあるけど、私はある意味でそれがうれしかったのでした。

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