任天堂サウンドに秘められた多彩な手法
3月上旬にゲーム開発者対象のカンファレンスイベント「Game Developers Conference 2007 (GDC 2007)」が、サンフランシスコ・モスコーニコンベンションセンターで開催されました。そこでは日本人による講演もあったのですが、「スーパーマリオブラザーズ」や「ゼルダの伝説」といった名作ゲームのBGMを手掛けた、任天堂のサウンド統括グループマネージャーである近藤浩治さんの講演内容を後で知り、その内容がとても素晴らしく私も非常に興味を持ちました。
○関連サイト「Game Developers Conference 2007」
【 http://japan.gdconf.com/ 】
○関連記事・GAME Watch『任天堂の近藤浩治氏、「マリオ」、「ゼルダ」のサウンドを語る
インタラクティブなゲーム音楽を作る多彩な手法』
【 http://japan.gdconf.com/ 】
○関連記事・ITmedia +D Games『「音楽」はゲームに命を与える――任天堂サウンドはこうして作られた (1/2)』
【 http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0703/08/news082.html 】
○関連記事・ITmedia +D Games『「音楽」はゲームに命を与える――任天堂サウンドはこうして作られた (2/2)』
【 http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0703/08/news082_2.html 】
○近藤浩治さんの講演要約(「GAME Watch」の記事を一部抜粋)●ゲーム音楽を作る際に心がけていること
「リズム」、「バランス」、「インタラクティブ」●リズム
・「音楽のリズムを合わせて作曲しないと、ゲームには合わない」
・「生のバンドやオーケストラのリズムは、その演奏者のリズム感になってしまい、
ゲームに合わなくなってしまうことが多い。
ゲームはコンピュータのクロックに合わせて動いているので、
音楽もそのクロックに従うのが一番しっくり来るはず」●バランス
・「ゲームソフト1本全体で1曲とする意識が必要。
イントロ部分はタイトル曲、サビの部分はボス曲といった感じ。
各曲のつながりや全体のバランスが非常に重要だと考えている」
・「前作のテーマを使ったり、同じメロディをアレンジして使うことで、
ゲーム内容が音楽によって整理され、わかりやすくなってより楽しめるようになる」
→「スーパーマリオ」シリーズにおいて、スターを取ったときの音楽をずっと同じにした。
また、「スーパーマリオ64」でも「一定時間パワーアップ」でスターのアレンジ版を使った。●インタラクティブ
・「ゲームが他のメディアと違うのは、リアルタイムに反応があるということ。
このインタラクティブ性を生かしたサウンド作りをする、
サウンドのアイデアを盛り込むことが一番重要だと考えている」
・「ゲーム音楽はCDなどのメディアとは異なり、
リアルタイムにインタラクティブな変化ができるということは、
非常に面白い特徴だと思う」
・例1「メロディが変わらない手法」
サンプルソフト:「スーパーマリオワールド」
→マリオがヨッシーに乗った際、BGMにパーカッションを加えるだけにした。
「パワーアップしたことを示すには、曲を変えるという方法もあるが、
この場合は曲の切り替えが頻繁に発生してしまう」
・例2「場所によって音楽のアレンジが変化する手法」
サンプルソフト:「スーパーマリオ64」
→通常はエレクトリックピアノだけ。
水に潜るとストリングスが加わり、洞窟に入るとベースとドラムが加わる。
・例3「キャラクタの動きに応じて音の位置を変える手法」
サンプルソフト:「マリオサンシャイン」
→影マリオの位置に応じて、BGMの再生される方向が変化する。
これによって、追いかけっこをしている様子をより明確に伝える効果が得られる。
・例4「曲のフレーズをランダムに変える手法」
サンプルソフト:「ゼルダの伝説 時のオカリナ」
→同じフィールド用BGMでありながら、音楽が毎回変化する。
8小節ごとのフレーズが12パターン用意されており、
それをランダムに繋げることで、プレーヤーを飽きさせない。
・例5「キャラクタの状態によって曲を変化させる手法」
サンプルソフト:「ゼルダの伝説 時のオカリナ」
→敵を攻撃して戦闘状態に入ると、曲の楽器が変わって物々しい雰囲気になる。
また立ち止まって武器を選ぶ際には、ゆったりとした曲になる。
ただ、どの状態でも基本となるメロディラインは変わっておらず、
統一感を残しつつ緊張感ややすらぎを表現している。
・例6「リアルタイムにフレーズが変化する手法」
サンプルソフト:「ゼルダの伝説 風のタクト」
→エネルギーボールのようなものを弾き返すとメロディが半音上がる。
それを繰り返して攻撃を命中させると、今度はファンファーレ的なフレーズに変化する。
あくまで既存のメロディを調整して演出効果を高める。
・例7「音楽がゲームに影響するという手法」
サンプルソフト:「New スーパーマリオブラザーズ」
→コーラスのフレーズに合わせて、敵がジャンプする。
動きにランダム性が加わりゲームを面白くするとともに、
ジャンプした敵に乗って高い位置に移動するといった仕掛けも用意されている。●ゲームの作曲
・「インタラクティブな変化を取り込むことで、いろいろな利点がある」
・「飽きの来ないよう、同じ音楽でもプレイするたびに変化する曲を作れる」
・「同じ曲の中で曲調が変わり、多彩な演出ができる」
・「曲の変化で新しい驚きを与え、ゲームをより楽しく遊んでもらえる」
・「音楽からのアプローチにより、ゲームの楽しみの要素が増える」
なるほど~~~っ!
実例を取り入れた見事な講演内容でした。「リズム」や「バランス」の話も良かったけど、最も詳しく説明されたという「インタラクティブ」の話が特に素晴らしいですね。私もプレイ経験があるゲームについての説明ですごく納得できました。「例1」はアレンジだけで普通と違う状態であることが把握できたし、「例4」はセガサターン用のゲーム「NiGHTS into dreams...(ナイツ)」でもあって小節の意外なつながりを常に楽しめたし、「例7」はある日敵が音楽に乗ってアクションしていることを知って面白かったし。こうして考えてみると、ゲーム音楽というのはゲーム自体に大きく影響を与えていることになりますね。実際私の場合、過去のゲームを思い出す際にまず音楽を思い出すことが多いですからね。分かってはいることだけど、改めてそのように思ったのでした。音楽無しでプレイすることは、ゲームの楽しさを自ら大幅に失わせているのと同じ?
関連記事の中で書かれていた、『「スーパーマリオブラザーズ」の映像を見せながら解説した近藤氏。これ自体はただのゲームプレイムービーなのだが、ムービーが終わると会場からは拍手喝采。さすがは世界一の人気タイトルである』や『近藤氏のメッセージに答えるかのように、会場では最後にスタンディングオベーションが起こる。近藤氏が恐縮しながらそれに応える姿が印象的だった』というレポートを読んで、その場の雰囲気が何となく伝わってきました。私もその講演を生で聞いていたら、間違いなくスタンディングしていただろうなあ・・・。
ところで、かなり前にNHKの番組で近藤浩治さんがVTR出演したのを見たことがあったんだけど、彼が同じ愛知県出身の方だと知って驚いてしまいました。
○関連記事・Wikipedia「近藤浩治」
【 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%97%A4%E6%B5%A9%E6%B2%BB 】
○「Wikipedia」の記事を一部抜粋近藤 浩治(こんどう こうじ、1961年8月13日 - )は、
主にゲームミュージックを手掛ける作曲家である。愛知県名古屋市出身。・作品
『デビルワールド』
『マリオシリーズ』
スーパーマリオブラザーズ
スーパーマリオブラザーズ2
スーパーマリオブラザーズ3
スーパーマリオワールド
スーパーマリオUSA
スーパーマリオ ヨッシーアイランド
スーパーマリオ64
マリオゴルフ64(監修)
マリオゴルフGB(監修)
マリオテニス64(監修)
マリオテニスGB(監修)
マリオカートアドバンス(監修)
スーパーマリオサンシャイン
マリオvs.ドンキーコング(アドバイス)
New スーパーマリオブラザーズ(サウンドディレクション)
『ゼルダの伝説シリーズ』
ゼルダの伝説
ゼルダの伝説 神々のトライフォース
ゼルダの伝説 時のオカリナ
ゼルダの伝説 ムジュラの仮面
ゼルダの伝説 ふしぎの木の実(サウンドアドバイス)
ゼルダの伝説 風のタクト(永田権太と共同)
ゼルダの伝説 4つの剣(サウンドアドバイス)
ゼルダの伝説 4つの剣+
ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし(サウンドアドバイス)
ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
『謎の村雨城』
『ふぁみこん昔話新・鬼ヶ島』
『パイロットウイングス』
『スターフォックス』(効果音)
スターフォックス64
「スーパーマリオブラザーズ」や「ゼルダの伝説」の音楽を手掛けたのは知っていたけど、好きな音楽が多く含まれる「デビルワールド」や「ふぁみこん昔話 新・鬼ヶ島」も彼の作品だったのを知ってさらに驚きました。やっぱりすごいよ、近藤さん。講演を実際に聞けなかったとしても、その事実を知っただけでスタンディングしたいくらいです!
「ニュー・スーパーマリオブラザーズ」/「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」
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