11/01に日本テレビ系で、終戦六十年スペシャルドラマ「火垂るの墓」が放送されました。元は野坂昭如さんによる原作小説で、アニメ映画としても名高いこの作品。私も随分前からチェックし、そのドラマ版をじっくりと見ました。
○日本テレビ「終戦六十年スペシャルドラマ『火垂るの墓』」
【 http://www.ntv.co.jp/hotaru/ 】
○「火垂るの墓」キャスト&スタッフ
【キャスト】
・澤野家
澤野久子:松嶋菜々子(清太・節子の叔母)
澤野源造:伊原剛志(久子の夫・大工)
澤野善衛:要潤(源造)の末弟
澤野なつ:井上真央(長女)
澤野はな:福田麻由子(次女)
澤野ゆき:飯原成美(三女)
澤野貞造:堀江晶太(長男)
・横川家
横川清:沢村一樹(清太・節子の父/海軍大佐)
横川京子:夏川結衣(清太・節子の母)
横川清太:石田法嗣(長男・中学三年生)
横川節子:佐々木麻緒(長女)
・町の人々
吉岡利之:生瀬勝久(町の駐在)
大林町会長:織本順吉
米屋の親父:高松英郎
農夫:不破万作
松井栄作:段田安則(よろず屋)
松井素子:岡本麗(栄作の妻)
・60年後の現代
光村なつ:岸惠子(旧名・澤野なつ)
光村恵子:井上真央(現代のなつの孫)[二役]
【スタッフ】
原作:野坂昭如
脚本:井上由美子 音楽:沢田完
エンディングテーマ:Bank Band「生まれ来る子供たちのために」
演出:佐藤東弥 プロデューサー:村瀬健
アニメ映画では清太と節子がメインで描かれましたが、このドラマ版では伯母・久子とその周辺のことがメインで描かれ、長女・なつの視点による回想でストーリーが進行していきました。
両親と離れた清太と節子を温かく迎えた久子だったが、後に生活上の困難から彼らを非難し始めたり、自分の子供だけにしかまともな食事を与えなかったり・・・。やがて澤野家を出た清太と節子は、湖のある森の横穴で野宿を始めるが、清太は食糧が無いためやむを得ず盗みを働き、節子は病気になってどんどん痩せ細っていき・・・。
節子「にいちゃん!(“ちゃん”にアクセント)」
清太「節子、具合ようなったんか?」
節子「(無言で頷く)」
清太「(笑顔で)そうか、良かったなあ!」
節子「ドロップ食べたら元気になってん」
清太「(不安顔で)ドロップ?」
(節子は口中に何かを含んでいる様子。清太は慌ててそれを取り出す。)
清太「あほ! 何なめとるんや! おはじきやないか!」
(節子は突然その場に倒れてしまう。)
清太「節子?」
節子「(手を差し出して)にいちゃん・・・、ごはんや・・・」
このシーン、アニメ映画でもあったけど、やっぱり涙が出てきました・・・。
昭和20年8月15日。すなわち、日本が負けた日、戦争が終わった日・・・。その意味を知らず無邪気に喜ぶ澤野家の子供たちと、全てを悟り不安げになる久子となつ・・・。清太も町で「日本の無条件降伏」を知り、同時に父親の死を悟り・・・。そして食糧を片手に森へ戻った清太だったが、節子は既にひどく弱っていて・・・。
清太「節子、すぐ卵入りのお粥さん作るさかい、な?」
節子「にいちゃん・・・、ありがとう・・・、おおきに・・・」
清太「待っててや!」
これが節子の最後の言葉でした。清太は米を研ぎながら節子に語り掛けても返事が無いのに気付き、慌てて節子のそばへ近寄ってみれば、既に目を閉じたままで・・・。
清太「あほやな、節子・・・。
もうじき、できるのに。卵入りのお粥さん・・・。
(号泣する清太)
節子、節子、なんでや、兄ちゃんどうしたらええんや!」
その後、久子となつは清太たちがいた森の横穴へ駆け付けたけど、既に彼らの姿は無し。清太は節子をおんぶして、童謡「ほたるこい」を歌いながら夕暮れの野道を歩いていたのでした。向かった先は、海の見える丘の上。清太は節子を籠に納め、そっと髪を整えてあげた後、赤い鼻緒の下駄を右足に履かせ、そして言いました・・・。
清太「節子、ごめんな。
もう片っぽ、探してやれん。
きっとな、お母ちゃんが、持ってはるで。」
清太は籠の蓋を閉め、枯れ木を添えました。辺りはもう夜。清太はマッチで火を付け、節子を火葬したのでした。その瞬間、周りから無数の蛍が緑色の光を放って飛び回り・・・。その後清太は節子の遺骨をドロップの缶に入れ、そのまま横穴には戻らず、町中で静かに命を絶ち・・・。
橋の上で、事実を知った久子となつが会話。なつは「私、もう生きていたくない・・・。私たちが死なせたのよ!」と言うが、久子は黙ってなつの左頬を2度叩き、こう言ったのでした・・・。
久子「何甘えたこと言ってるの!
戦争はまだ終わってないのよ。
本当の戦争はこれからなの。
死んだら負け。死んだら終わりなのよ!」
この言葉、心に響きました・・・。2人は抱きしめ合い、久子はさらに「死んだら終わりなのよ」と言い聞かせました。それは、自分にも言い聞かせるように・・・。久子はそれ以後、95歳で亡くなるまで、一度も戦争のことは口にしなかったのでした・・・。
時は流れて、60年後の現代、夕暮れ時。なつは孫・恵子を連れてあの橋へ。この地で起きた、当時のことを話しながら・・・。
恵子「初めてだね」
なつ「ん?」
恵子「おばあちゃんから戦争の話を聞くの」
なつ「思い出したくなかったの。
戦争のことも。ここで起こったことも。」
亡くなった清太くんと、節ちゃんのことも。
でも、お母さんはちゃんと覚えていたのね。
それで、これ(ドロップの缶)を見るたびに、
生きてしまった重さを、噛みしめていたのかもしれない。」
恵子「戦争って、昔話じゃないんだね。
だって、大おばあちゃんが生きて、
おばあちゃんが生きたからお母さんがいて、
それで、私がここにいるんだもんね。」
なつ「(無言で頷く)」
恵子「おばあちゃん」
なつ「ん?」
恵子「この川、どこまで流れてるんだろうね?」
なつもまた、久子と同様に今日まで戦争のことを口にしなかったようです。なつはドロップの缶の蓋を開け、入っていた節子の遺骨を全て手に取り、川へ向かってばら撒きました。そのうちの2つが蛍の光となり、夜になった空を舞っていったのでした・・・。ここでタイトルバックへ。エンディングテーマであるBank Bandの「生まれ来る子供たちのために」が流れ、最後にこんな字幕が黒バックに白文字で表示されました・・・。
このドラマはフィクションですが
世界中には今も清太や節子のように
戦火の中に暮らしている子供たちが
数多くいます。
本当に良いドラマでした! もう、とめどなく涙が出てしまって・・・。久子が数度に渡って言った「戦争」についての言葉は、今後も忘れることは無いでしょう。久子こと松嶋菜々子さんは、途中からやむを得ず憎まれ役に徹しはしたけど、演技は見事なものでした! そして清太こと石田法嗣くんと節子こと佐々木麻緒ちゃんの子役2人は、アニメ映画のイメージそのままで、涙の兄妹愛を上手く表現していました! このドラマ版「火垂るの墓」は、日本テレビ系の名作ドラマの一つになりそうです!
さて、話は変わって、一つ私的な話を・・・。
○関連記事『Bank Band・ドラマ「火垂るの墓」のテーマ曲が「生まれ来る子供たちのために」に決定』
【 http://adstv-web.cocolog-nifty.com/studio/2005/10/post_ccbc.html 】
ドラマ版「火垂るの墓」の放送を前に、エンディングテーマがBank Bandの「生まれ来る子供たちのために」になると発表されたことを記事にしました。それは私が単にBank Bandのファンだからであって、当然のように書いただけなんですが・・・。このドラマの放送終了後、ここで設置している「現在閲覧者数」の表示が「177名様がご来場中」となっていてびっくり! 「こんな数字は見たことが無いし、もしかして巡回ソフトで連続アクセスされているのでは? でもアクセス元のIPアドレスで算出されているはずだから、それは考えられないか?」なんて思って、「きっとカウンタが壊れたのだろう」と結論付けていました。しかし、その予想はうれしい方向で外れました。すぐに「アクセス解析」で調べてみたところ、エンディングテーマ「生まれ来る子供たちのために」の話題を求めるものも含めて、本当に177クライアントからアクセスがあったようなのです。それもそのはず・・・。
放送日(11/01)の時点でGoogleにて「Bank Band」を検索すると、
ここの記事がかなり上位にリストアップされていた!
(試しにクリックしてみてください。現在はどうでしょう?)
それに加えて、「mixi」の掲示板でも関連記事として取り上げられていた!
(会員の方は探してみてください。複数トピックスで紹介されたようで、感謝!)
○関連カテゴリ「Bank Band」
【 http://adstv-web.cocolog-nifty.com/studio/bankband/ 】
結果的には、先に挙げた記事を書いていたことで、その期待に応えられたようです。Bank Bandのファンとしての意見を求められている気がして、ある種の義務感のようなものも感じて、今後もBank Bandの話題を逃せなくなりました。訪れてくれた皆さん、どうもありがとうございました!
ここで改めて、「生まれ来る子供たちのために」の話へ移ります。
多くの過ちを僕もしたように
愛するこの国も戻れない もう戻れない
あのひとがそのたびに許してきたように
僕はこの国の明日をまた想う
ひろい空よ僕らは今どこにいる
頼るもの何もない
あの頃へ帰りたい
ひろい空よ僕らは今どこにいる
―――生まれ来る子供たちのために何を語ろう―――
生まれ来る子供らのために
何を語ろう
君よ愛するひとを守り給え
大きく手を広げて
子供たちを抱き給え
ひとりまたひとり 友は集まるだろう
ひとりまたひとり ひとりまたひとり
真白な帆を上げて旅立つ船に乗り
力の続く限り ふたりでも漕いでゆく
その力を与え給え
勇気を与え給え
なつと恵子の会話シーンの途中より、静かにイントロからAメロが流れ始め、なつが遺骨をばら撒く前にBメロへ移り、ばら撒いたところでサビへ向かいました。オフコースによる原曲の歌詞を軸にすると、Bメロが一部が除かれた形に。また、“生まれ来る子供たちのために何を語ろう”という小田和正さんのセリフ部分は、“♪生まれ来る子供らのために”という曲乗せの詞に置き換えられていました。この置き換えは、Bank BandのDVD「BGM Vol.2 ~ 沿志奏逢」で聴けるものと同じです。現在は11/30までの期間限定で「iTunes Music Store」にて独占ダウンロード販売が行われています。これが本当に良い曲で、ドラマにも良く合っていたように思いました。何と言っても、「放送されるこのドラマのために」とも言えるリテイク版ですからね! 私も放送後は、このドラマの録画版で何度も聴き返し、DVD「BGM Vol.2 ~ 沿志奏逢」で何度も聴き返し、オフコースの原曲まで何度も聴き返しました。どれを聴いても感動したなあ・・・。
ところで、Bank Bandのボーカルである櫻井和寿さん(Mr.Childrenのボーカル・桜井和寿)と「火垂るの墓」の原作者である野坂昭如さんには、意外な接点があるんですね。それは、Mr.Childrenの9thアルバム「Q」の8曲目「友とコーヒーと嘘と胃袋」。中盤で桜井さんによる長いセリフが出てくるんだけど、その中で「赤塚不二夫」、「キース・リチャード」、「藤原組長」と並んで、「野坂昭如」という名前が出てくるんです。その直前のセリフは「ある意味もうあこがれに近い感じがあるよ」。その直後のセリフは「粋だねー 下町情緒だよねー」。興味がある方は、一度聴いてみてくださいね!
ドラマのタイトルバックの映像を担当されたのは、Mr.ChildrenのCDジャケットやPV等をも手掛ける丹下紘希さん(イエローブレイン所属)。そのタイトルバックを見て驚いたのは、清太と節子の映像だけでなく、世界中の子供たち(特にアジアの貧しい子供たち)が微笑む映像をいくつも重ねていたこと! 映像のコンセプトとしては、Mr.Childrenの「タガタメ」や、「日清カップヌードル」のCM映像に通ずるものがありましたね!
ラストで恵子も「戦争って、昔話じゃないんだね。」と言っていたけど、このドラマを見る前は「戦争を知らない・体験していない私にとっては昔の話」とどこかで思っていました。しかしラストに近付き、久子となつと恵子のセリフやそのタイトルバックの映像を見て、「決して『昔の話』と割り切ってはいけない。今後同じような事態が起こり得るかもしれない。」と改めて考え始めたのでした。それは、久子の言った「戦争はまだ終わってないのよ。」というセリフにもある意味でつながりますね。しかも現代は当時よりも技術が進歩し、凶悪な化学兵器や核兵器で当時よりも多大な被害を被る可能性も高く、見つめ直すべき問題でもあります。
このドラマを見て、今ある何気無い日常と命の尊さを感じ、「戦争」に対する意識もより一層高まりました。

アニメ映画「火垂るの墓」/オフコース「オフコース・グレイテストヒッツ 1969-1989」

Bank Band「沿志奏逢」(CD)/「BGM Vol.2 ~ 沿志奏逢」(DVD)
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