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2004.09.10

「人間の証明」・全話レビュー

近年フジテレビが高級感あるドラマを送り出すようになった「木曜・22時」枠。今クールは「人間の証明」が放送され、昨日9/08に全10話が完結しました。原作は作家・森村誠一さんのベストセラー小説で、1977年に映画化されヒットした作品。今回は連続ドラマとしてのリメイク版でした。私は原作や映画が未見ながら、ストーリーの良い評判だけは以前から知っていて、ドラマが始まってもあえてレビューは書かなかったけど、これまで密かにじっくり見てきました。そして全てが終わった後の感想は、「確かに面白かった!」でした。

○ドラマ視聴率は本館サイトの該当コーナーから!
○フジテレビ系「人間の証明」
○「2004年夏ドラマ・レビュー方針」・レビューを書かない宣言あり

4つの異なる事件がやがて一点に収束していく様が良かったです。

1. 黒人青年ジョニー・ヘイワードの殺人事件
2. 神奈川県知事選に立候補する群恭子の影
3. 不倫の三角関係にある女性の失踪
4. 麻薬捜査他に追われる若いカップル

以下、ネタバレ話をしっかり含めて書きます。ご注意を!

いきなり、全話のまとめ!

4のカップルが逃走中に顔を見られた3の女性を監禁。女性は隙を見て逃げるが、山中で転落死しカップルは死体を遺棄。そのカップルの男は2の郡恭子の息子であり、1のジョニー・ヘイワードも同じく息子。そして1の息子や関係者を殺害したのは2の郡恭子だった、という結末。群恭子が全て悪いわけではないが、全体を通して彼女の生涯が軸になっていた。

1は、主役の刑事・棟居弘一良(むねすえ・竹野内豊)がジョニー(池内博之)の事件を追う話。「ストーハ(ストローハット)」、「キスミー(霧積)」等の、彼が残した言葉を手掛かりに捜査を進めるが、そのうちに自分自身の暗い過去へつながることに。子供の頃、横浜で父親をなぶり殺しにした米兵の一人、ケン・シュフタン(ボー・スヴェンソン)を、アメリカでの捜査中に偶然発見した(現地の刑事でした)。しかも父親が助けた女性が郡恭子だったことに気付いてしまった。最後は証拠がないまま郡恭子を任意同行という形で捕らえたんだけど、全ての犯行や過去の事件や壮絶な生涯等を全て自供させるまでのシーンは圧巻でした。棟居を支えた、那須英三郎(緒形拳)・横渡篤(大杉漣)・女雑誌記者の本宮桐子(夏川結衣)も良かった! それに反発する、河西義行(津嘉山正種)・山路利雄(佐藤二朗)たちの位置付けも良かった!

2は、知事選を控える群恭子(松坂慶子)の元に、相馬晴美(りりィ)という謎の女性が近づく話。恭子の夫・陽平(鹿内孝)の秘書である佐伯友也(田辺誠一)も気にはしていたが。その昔何か接点があり、その謎はずっと明かされずに来たけど、旧姓・八杉恭子が相馬晴美に成り代わった時期があって、その後今ある地位や名誉を手にしたという過去があったんですね。相馬晴美は、左翼の学生運動に傾倒していた人物。現在になって恭子を裏でゆする姿が毎回不気味で怖かった。最終的には、郡陽平(会社の不当行為疑惑がある前県知事)・郡恭子・郡翔平と、郡親子のうち三人もが何かの罪を問われたことになるんですね。唯一純粋のままだったのが、娘のさやか(堀北真希)だけ・・・。

3は、車椅子生活を送っていた小山田武夫(國村隼)が失踪した妻・文枝(横山めぐみ)の行方を追う話。独自で追っていたところ、新見(風間杜夫)という不倫相手の存在を知る話。最初はものすごく反発し合っていたけど(当然か)、二人で事件を追っているうちに不思議な友情が芽生えてしまったのが、変な話だけど良かったですね。最終話では小山田が初めて新見の名を呼んで、固く握手までしていました。当初は他の事件と関係しないただの醜い話だと思っていたけど、しっかり関係していましたね。この二人は全体的に見ればサイドストーリーとしての活躍が多かったけど、メインストーリーを沸き立てる演技力が素晴らしかった! 特に國村隼さんの熱演は、助演男優賞もの?

4は、郡恭平(高岡蒼佑)と朝枝路子(松下奈緒)の逃亡生活の話。初めはある店での麻薬の強制捜査から逃走した二人だったが、その途中で小山田文枝に顔を見られ別荘に拉致監禁。その後山中へ逃げ転落死した文枝を地中に埋め、証拠隠滅で動きつつ親の郡恭子の選挙活動を手伝うが、死体が見つかった途端また逃走し・・・。結局このカップルは、最初から最初まで逃げ続けていましたね。思い返せば、初回話の麻薬強制捜査で警察に捕まったのは田中要次さん。彼はTBS系のドラマ「逃亡者」でも悪役で出ていますよね。逃亡者、逃亡、なるほど、ここで「逃亡劇リンク」があったか! 両ドラマがどこか似ていると毎回のように感じられたのは、こうした細かい要素からのリンクのせいでもありますね。

さて・・・これで主要キャストの名前がほぼ全員出たかな? この作品を既に知っていた人は、郡恭子役の松坂慶子さんが最終的に大きく取り上げられることも分かっていたのかな? ストーリーの軸になった彼女の生涯と共に主軸になったのは、なんと言っても西条八十(さいじょうやそ)の「帽子」という詩の一節! その昔も流行ったとか?

詩:西条八十「帽子」より

母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
ええ、夏碓氷から霧積へ行くみちで、
渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ

このドラマをバックで盛り上げた、岩代太郎さんによる音楽も良かったです。彼の近年の代表作と言えば、「サイコドクター」や「ぼくの魔法使い」、もう少し前だと「WITH LOVE」や「白線流し」等。竹野内豊さんの主演作が意外に多いことに気付きます。スリリングな展開に程よくマッチした音楽があって、ドラマ自体が光ったんですね。ところで主題歌は、“Kyogo Kawaguchi”こと河口恭吾さんの「A Place In The Sun」。スティービー・ワンダー氏の名曲のカバーでした。この曲は明るい調子の歌だけど、ドラマの最後で流れることで雰囲気が損なわれる気がしてなりませんでした。しかし途中から、「事件の真相が徐々に解明されていく“兆し的役割”かな?」と思い始めました。特に良かったのが第8話のラスト。棟居がアメリカで、ジョニーの母親が相馬晴美と名乗る群恭子だったことを視聴者へ解明した後、岩代太郎さんの劇中曲のままタイトルバックが始まり、河口恭吾さんの主題歌へ自然に移っていきました。このクロスフェードは実に良かったですね。最終話に至っては、全ての事件が解明されたことで、本来持つ明るい気分のまま聴けました。そう考えるとこの主題歌は、ドラマ自体のラストを飾るために採用されたとも言えるかな?

最後に、私はこのドラマのレビューを毎話のように書かなくて、やっぱり正解だったと思いました。絡み合う事件を追うのが大変だったのもあるけど、その分こうしてじっくり見てこられましたからね。今クールのドラマが一斉にラストへ向かっている最中ですが、私の中では既にこの「人間の証明」が“今クール・ベスト3作品”の一つとなりそうです!

※2004/10/25追記
角川映画の「人間の証明」を見て、感想を書きました!
○関連記事・『「人間の証明」の映画版を見ました』
http://adstv-web.cocolog-nifty.com/studio/2004/10/post_31.html

「人間の証明」DVD-BOX
「人間の証明」DVD-BOX

人間の証明
「人間の証明」原作小説(森村誠一)

西条八十詩集
「人間の証明」登場詩・西条八十詩集(西条八十)

「人間の証明」オリジナルサウンドトラック
「人間の証明」オリジナルサウンドトラック(岩代太郎)

A Place In The Sun
「人間の証明」主題歌・「A Place In The Sun」(河口恭吾)

人間の証明
「人間の証明」映画版(角川映画第2弾・松田優作他出演)

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コメント

あずさんも、密かに見ていらしたんですね!
本当に、重厚な見ごたえ充分な人間ドラマでした。
とにかく、一人一人個性豊かな役を見事にこなしていて、改めて日本の役者さん達の奥深さを感じました。

投稿: シェリー | 2004.09.11 19時57分

 実はこっそりこのドラマ...ほとんど見れませんでした(トホホ)この夏ドラマクールで結構注目していたはずだったのに。会社から帰ってテレビを点けると大抵「ムーヴィ・ノ~~ン!」と河口恭吾さんの歌声が聴こえて悲しくなりました(苦笑)。なのでこのレビューを読んでなんだか嬉しくなりホッとしているところです(笑)。
 これでコメント終わりも悲しいので岩代太郎さんについて私も思ったことと言えば、『フジテレビドラマ系「氷の世界」で岩代太郎さんと竹野内豊さん共演(?)』ですね。岩代太郎さんの音楽は結構好きです。「氷の世界」「白線流し」と共にサントラ持っていますが、「人間の証明」も買ってみようかと考えています。前者2枚は曲演奏している人に私の知り合いがいた(買ってから知ったんですが...)のがビックリでした。んでこれを書いている今は「A Place In The Sun」(Kyogo Kawaguchi)を聴いてちょっとだけ「人間の証明」気取りを味わっているところです...

投稿: LX | 2004.09.12 01時53分

過去と向き合って(引きずって)生きて来た棟居と、過去を捨て(消して)生きて来た恭子。
恭子に残ってる”情”に賭けた棟居の取調べ。二人のやり取りに引き込まれました。
あずさんが言うように、音楽も良かったし。ここで泣かせる!ってタイミングで流れるんだよね~(^_^;)
ご存知『WITH LOVE』から岩代さんには注目!(余談:波田さんにも斬られた松本アナと結婚!にはびっくりしたわぁ。そりゃぁイイ曲作るもの~:笑)
「氷の世界」もそうだったんですね~!φ(..)メモメモ

崖から落ちた新見達を助けようと必死の小山田に「恨んでも当然の私をどうして必死で助けるのか?」と翔平に話すシーンで、『人間の証明』を感じましたよ。
そして恭子が涙を流したシーン。「残ってたんだ、人間の心が」ってジ~ン(/_;)

主題歌はラストのために…あずさんのコメントを読んで、私もそう感じました。
最終回が満足だったから、”世間は狭すぎる”って展開は許そう(笑)

投稿: マナ | 2004.09.12 14時10分

>シェリーさん

密かにというか、一応当初からレビュー方針は公言していたんですよ。「誰が犯人?」ではなくて「どう収束するのか?」を楽しむ作品なので、一人でじっくり見ました。最後は見応えありましたね。演技派揃いだったし、皆個性溢れていました。だからこそこうして長文記事を書けたんだと思いますよ。

>LXさん

逆に見られなかったんですね? 評判通り良い作品なので、再放送か何かでの視聴を是非お奨めします。岩代太郎さんの話だけど、「氷の世界」は見ていなかったんですよ。それも竹野内豊さんの主演作だったんですね。しかも調べたら、役の出身地が横須賀だったり、タイトルの「氷」と「郡(恭子)」が同じ「こおり」だったり、何気に本作品と通ずるものがあるんですね(笑)。サントラのちょっと良い話、驚きました!

>マナさん

1行目の、棟居と郡恭子の「過去」というものの扱い方の対比は、お見事でした! でもラストでは、棟居が郡恭子の中に残る情を誘い出したんですね。緊張のシーンで、今思い出してもゾクゾクします。岩代さんが手掛ける音楽の種類は幅広い! そっか、日テレの松本アナの旦那さんなのを忘れてた! 松本アナが先日「エンタの神様」で、波田陽区にそのネタで斬られたばかりだというのに(笑)。

多種多様な「人間の証明」が存在しましたね。主題歌の解釈は、私の持論で納得してもらえた? 「世間は狭すぎる」、これは意外に真実かもしれませんよ(笑)。

投稿: ads(あず)@管理人 | 2004.09.14 01時28分

 再放送マジ希望!まあ、気長に待つことにしますか(笑)。ビデオに録画しておけばと思ったんですが、1回たりとも記録する事無くクール終了となりました...
 「人間の証明」「氷の世界」とも推理物の話となっていたわけですが、竹野内さんについて後者は確か新聞記者だったような記憶がありますけど、次々起こる事件を興味深く推理していくところなんざ、今回の「人間の証明」刑事役しかり、まさしく彼の真骨頂!!(?)...ああ、やっぱり見たかったなぁ(泣)
 脱線ついでに、演奏している知り合いの人からサントラの楽曲名について「へぇ~こんな曲名になってるんだ」と言っていたのを思い出しました。スタジオ入っていきなり譜面を渡され、すぐに演奏し始めるそうですが、その曲名が書いてあることは案外少ないそうです。中にはどういう楽曲として用いられるのか不明なこともあるみたいですね。私が持っている岩代太郎さんのサントラアルバムはどちらの楽曲名もすべて英語ですから難解な所もあるのかなぁ(笑)。

投稿: LX | 2004.09.14 02時18分

再放送までは半年くらいかかるかな? 気長に待ちましょうか。竹野内豊さんの、味があるというか渋いというか、冷静ながら物事に着目して行動する演技っていうのは良いですね。彼の持ち味はそういう点だと思います。マスコミ誌か何かの記事で、「彼はいつまで経っても素人演技」みたく書かれていて不快に思ったけど、書いたあんたの記事の方が素人っぽい批判じゃないかなんて思いましたよ、はい・・・。

曲名は仮タイトルで長く呼ばれるというのは、結構多い話ですよね。ミスチル曲でもそういうのを聞いたことがあるし、ソフトウェアも開発者はコードネームで呼び合うし。逆に、知っている曲が内部でどう呼ばれていたかは、気になるところですね。

投稿: ads(あず)@管理人 | 2004.09.15 02時29分

はじめまして。
人間の証明で検索してこのHPにたどり着きました。
全話見ていたのですが、私の周囲では見ていたというものが少なく、最終回のスペシャルもなかったので視聴率が取れなかったのかと思っていました。しかし、私の評価では1977年で上映された映画に比べ、人間関係の複雑さや深さを感じ取ることができた良い作品だと感じました。映画での岩城洸一演じる郡恭平よりも育成歴が深く描かれ、ぬいぐるみにすがる姿に見られるような若者のもろさなどが物語にアクセントを加えていました。フジテレビはこのようなシリアスなドラマをこれからも作り続けてほしいと思います。

投稿: JK | 2004.09.24 22時01分

初めまして! このドラマは、最終話だけ見ても楽しめる作りだったと思います。郡恭子の生涯に沿って、事件の真相が明かされましたからね。

映画版は見たことがあったんですね~。ほうほう、そういった感想でしたか、なるほどね。近日中にこの作品の関連記事を書く予定なので、また読んでくださいね。「木曜・22時」枠だけでも、シリアスもので作り続けてもらいたいですね!

投稿: ads(あず)@管理人 | 2004.09.24 23時54分

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